育休明けの職場復帰ができない?!原職復帰の権利と不利益取扱いを社労士が解説

コラム

育休明け、いざ職場に戻ろうとしたら「あなたのポジションはなくなりました」「別の部署で働いてもらいます」と言われた――そんな育休明けの復職トラブルは、実はよくあるケースです。

育児休業は法律で守られた大切な権利。でも、復職後のポジションや待遇について不安を感じる方は少なくありません。「これって違法じゃないの?」「でも会社と揉めたくない…」そんなモヤモヤを抱えている方へ。

今回は、育休明けの職場復帰に関する法律のルールと、あなたが持っている権利について、社労士がやさしく解説します。


【第1章】復職後の待遇はどうあるべきなの?

1-1.法律上の取扱いは?

育児・介護休業法という法律では、事業主に対して、“労働者が育休を取得したこと”等を理由として、不利益な取り扱いをしてはいけないと定められています。

(不利益取扱いの禁止)
第10条
 事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第9条の5第2項の規定による申出若しくは同条第4項の同意をしなかったことその他の同条第2項から第5項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない

このほかにも、育児休業明けの待遇については、厚生労働省の指針でも「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮すること」と記載されています。
◇参考:厚生労働省指針

1-2. 「原職相当職」の3つの条件

上述の「原職相当職」とは、原則、以下の3つの条件がそろっているかどうかで判断されます。

  • 職制上の地位:休業前より役職が下がっていない
  • 職務内容:休業前と同じ種類の仕事
  • 勤務場所:休業前と同じ事業所・エリア

具体例:

  • ○ マーケティング部→広報部(同じ企画職、給与同等) → 原職相当職の可能性あり
  • × チームリーダー→一般社員(役職ダウン) → 原職相当職ではない
  • × 本社勤務→地方店舗(通勤2時間増) → 原職相当職ではない

1-3. やむを得ない事情がある場合

会社の経営状況の悪化など(部署閉鎖や組織再編など)の正当な理由がある場合は、原職に戻れないといったケースもあります。そういった場合でもまずは、原職相当職を検討することが事業主に求められています。
◇参考:厚生労働省|妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A


【第2章】これは違法?「不利益取扱い」のボーダーライン

2-1. 育児・介護休業法で禁止されている「不利益取扱い」

育児休暇を取ったことを理由に、不利益な取扱いをすることは法律で禁止されていますが、具体的には以下のような扱いが「不利益取扱い」に該当します。

  • ❌ 解雇・雇止め
  • ❌ 降格・減給
  • ❌ 不利益な配置転換(通勤時間が大幅増、職務の著しい低下 等)
  • ❌ 昇進・昇格の対象外とする
  • ❌ 賞与等のおける不利益な算定
  • ❌ 正社員からパートへの変更を強要
  • ❌ 仕事をさせないなど

2-2. 「契機として」の重要ルール

「育児休業等を理由とする不利益取扱い」に関しては、育休等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は法違反だとされています。(厚労省解釈通達)
「契機として」いるのか・いないのかは、原則、時間的に近いかどうかで判断されます。
具体的には、育休終了後1年以内に上記の不利益があった場合、育休を理由とした不利益取扱いと推定されます。
もし育休復帰後に降格等にあった場合、会社側が「育休を取ったこととは関係ない」と説明しても、1年以内であれば因果関係があると判断されやすい点に注意しましょう。
◇参考:厚生労働省 解釈通達(平成27年1月23日雇児発0123第1号)

2-3. 例外が認められる2つのケース

育休取得を契機としていても(育休取得後1年以内であっても)、法律上で定められている、“育休取得を理由とした不利益取扱い”ではないとされる例外があります。

  1. 業務上の必要性が高い場合 — 部署の閉鎖などで原職相当職そのものが存在しないなどの特段の事情。また、育休取得前から本人の能力に問題があり、改善の機会を与えたにもかかわらず改善されない状況なども該当。
  2. 本人の同意がある場合 — 自由意思による同意で、同意に至る経緯に問題がないこと(書面があると安心)。

【第3章】よくある復職トラブル事例と対応方法

事例1: 「あなたの部署はもうありません」と言われた

チェックポイント:提案された配置が原職相当職か(職制・職務・勤務地)、給与や通勤時間に変化はないかを確認します。

対応のヒント:

  1. まずは提案が原職相当職に当たるか確認する。
  2. 条件面で不利益があれば人事担当者に相談。書面で説明を求める。
  3. 他に原職相当職がないか検討を依頼する。

事例2: 降格・減給を伴う異動を命じられた

これは典型的な不利益取扱いです。

対応のヒント:

  1. 書面で異動・降格の理由を確認する。
  2. 就業規則や育児・介護休業規程を確認する。
  3. 「育休取得を理由とした不利益取扱いではないか」と明確に指摘する。
  4. 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する。

事例3: 「仕事がない」と遠回しに退職を促された

退職勧奨自体は法律で即違法というわけではありませんが、育休を理由に退職を促すのは問題です。

対応のヒント:

  1. 退職の意思がないことを明確に伝える。
  2. 面談内容は日時・場所・発言内容を記録しておく。
  3. 速やかに都道府県労働局へ相談する。

事例4: 時短勤務希望なのに「難しい」と断られた

3歳未満の子を養育する労働者には時短勤務を講じる配慮が求められます。ただし、業務の性質で適用除外がある場合もあります(ただし代替措置が必要)。

対応のヒント:

  1. 労使協定の有無を確認する。
  2. 適用除外業務に該当するかを確認する。
  3. 代替措置(フレックスなど)の提案を求める。

【第4章】トラブルを防ぐために〜復職前にできること

4-1. 復職面談を活用しよう

  • 育休中に会社と定期的にコミュニケーションを取る。
  • 復職予定日の1〜2ヶ月前に面談を設定する。
  • 希望する働き方や配置を事前に伝える。

厚生労働省から、復職前の面談シートの一例が公開されています。ぜひ参考にしてみてください▶
◇参考:厚生労働省|産休・育休復帰支援面談シート

4-2. 書面で記録を残す

  • 面談内容は必ずメモに残す。
  • 配置や労働条件の提案は書面(メール等)で確認する。
  • 自分の希望もメール等で記録に残す。

4-3. 相談窓口を知っておく

万が一、育休復帰後にトラブルになったら、一人で悩まず公的機関や専門家に相談しましょう。

  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) — 育児・介護休業法に関する相談・紛争解決の援助
  • 労働条件相談ほっとライン — 厚生労働省委託の電話相談:0120-811-610(平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00)
  • 社会保険労務士・弁護士 — 就業規則確認や会社との交渉サポート

まとめ

育休明けの職場復帰は、法律であなたの権利が守られています。

覚えておきたい3つのポイント:

  • ✅ 原職または原職相当職への復帰が原則
  • ✅ 育休取得を理由とした不利益取扱いは違法
  • ✅ 困ったら都道府県労働局に相談できる

育児休業は、子育てと仕事を両立するための大切な権利です。あなたが安心して復職し、キャリアを継続できるよう、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。


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参考資料

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