【小規模事業者向け】こども性暴力防止法の準備は何から始める?従業員10名未満の民間事業者向け実践ガイド

こども性暴力防止法(日本版DBS)サポート
  1. はじめに
  2. そもそも「こども性暴力防止法」とは?
    1. 法律の正式名称と目的
    2. 小規模な民間事業者は「認定制度」の対象
  3. あなたの事業は対象?認定を受けられる民間事業の要件
    1. 民間教育保育等事業者の4要件
    2. 対象となる事業の例
    3. 「人数要件」の注意点(小規模事業者向け)
  4. 【3ステップ】小規模事業者が今すぐやるべき準備
    1. ステップ1:現状把握と方針決定
      1. やること①:対象従事者の洗い出し
      2. やること②:認定取得の方針決定
      3. やること③:実施責任者を決める
    2. ステップ2:最低限の規程・書類整備(2026年春頃~)
      1. 必須書類①:行動規範
      2. 必須書類②:情報管理規程
      3. 必須書類③:相談対応マニュアル(A4で1枚程度)
      4. あると望ましい書類:就業規則の見直し
    3. ステップ3:採用フローの見直し(2026年春~施行まで)
      1. 変更点①:募集要項への記載
      2. 変更点②:面接時の説明と誓約書
      3. 変更点③:内定通知書への記載
      4. 変更点④:性犯罪事実確認の実施
      5. 変更点⑤:性犯罪歴が判明した場合の対応
  5. 現職スタッフへの対応:施行後1年以内に確認が必要
    1. 認定取得時のスケジュール
    2. 確認の進め方
  6. 研修の実施:小規模事業者でもできる簡易版
    1. 研修の義務
    2. 小規模事業者向け研修プラン
    3. 研修の記録方法
  7. 認定申請の実際:手続きと費用
    1. 申請の流れ
  8. よくある質問(小規模事業者向け)
    1. Q:夏期講習だけの短期アルバイトやボランティアも対象?
    2. Q:先生以外の事務スタッフなども対象?
    3. Q:オンライン授業のみの講師も対象?
    4. Q:個人事業主の私一人で教室を運営している。対象になる?
    5. Q:認定を取得しないとどうなる?
  9. まとめ:小規模事業者が押さえるべきポイント

はじめに

2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法」。学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設など、小規模な民間教育保育事業を営む事業者の方から、「何から手をつければいいのか分からない」という声を多く聞きます。

本記事では、小規模な民間事業者が無理なく準備できるよう、優先順位をつけて実務対応を解説します。社会保険労務士として、実際に準備を進める手順とポイントをお伝えします。

※本記事の内容は2025年11月時点の情報に基づいています。今後、ガイドラインやマニュアルの公表により、詳細が変更される可能性があります。最新情報はこども家庭庁のウェブサイトでご確認ください。

そもそも「こども性暴力防止法」とは?

法律の正式名称と目的

正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。2024年6月に成立し、2026年12月25日に施行されます。

この法律は、教育・保育の現場でこどもを性暴力から守るため、事業者に一定の防止措置を求めるものです。「日本版DBS」とも呼ばれています。

小規模な民間事業者は「認定制度」の対象

重要なポイント:民間事業者の場合、取組は義務ではなく「認定」を受けることで実施します。

ただし、認定を受ける・受けないに関わらず、この新法で示されている防止措置は、子どもたちを守ることはもちろん、保護者からの信頼も得ることにもつながり、事業を安定して持続しさせていくことに大きく貢献する内容となっています。

あなたの事業は対象?認定を受けられる民間事業の要件

民間教育保育等事業者の4要件

以下の4つすべてを満たす事業が認定対象として検討されています。

  1. 修業期間要件:6か月以上の期間中に2回以上同じこどもが参加できる
  2. 対面要件:こどもと対面で接する
  3. 場所要件:こどもの自宅以外で教えることがある
  4. 人数要件:こどもに何かを教える者が3人以上

対象となる事業の例

  • 学習塾(個別指導、集団指導)
  • スポーツクラブ(サッカー、野球、体操教室等)
  • 音楽教室(ピアノ、バイオリン等)
  • 英会話教室
  • プログラミング教室
  • 認可外保育施設
  • 放課後児童クラブ
  • 一時預かり事業
  • 病児保育事業
  • 各種学校・専修学校(一般課程)

芸能事務所やこども食堂も要件を満たせば対象になります。

「人数要件」の注意点(小規模事業者向け)

「こどもに何かを教える者が3人以上」という要件について、以下のような疑問が想定されますが、詳細はガイドライン等の公表を待つ必要があります。

– 講師2名+事務スタッフ1名の場合、事務スタッフは「教える者」に含まれるか?
– 複数の教室を経営している場合、各教室で3名必要か、事業全体で3名でよいか?

2025年度内に公表予定のガイドラインやマニュアルで明確化される見込みです。

【3ステップ】小規模事業者が今すぐやるべき準備

小規模事業者が限られた時間とリソースで準備を進めるための、優先順位つき3ステップを紹介します。

ステップ1:現状把握と方針決定

やること①:対象従事者の洗い出し

まず、誰が「従事者」に該当するかリストアップしましょう。

対象となる人

  • 常勤・非常勤の講師
  • アルバイト・パート講師
  • 短期間のスタッフ(夏期講習のみ等)
  • ボランティア
  • 送迎担当者(こどもと継続的に接する場合)
  • 事務スタッフ(こどもと継続的に接する場合)

小規模事業者のポイント:派遣スタッフの扱い 派遣スタッフを受け入れている場合、派遣先(あなたの事業所)が確認を実施する予定です。派遣会社との契約書を見直しておきましょう。

やること②:認定取得の方針決定

経営者として「認定を取得するか」を決めます。

認定取得のメリット

  • 国がHPなどを通じて公表
  • 保護者への信頼性向上
  • 認定マークを広告・ウェブサイト・看板等に使用できる

認定取得のコスト

  • 申請手数料:約3万円
  • 準備にかかる時間:経営者・担当者の工数
  • 毎年の定期報告対応

小規模事業者の判断基準

  • 地域での競合状況(他社が取得予定か)
  • 保護者の関心度
  • 事業の継続年数(今後10年以上続ける予定か) など

やること③:実施責任者を決める

小規模事業者では、経営者自身が実施責任者になるケースがほとんどです。

ただし、以下の業務を誰が担当するか明確にしておきましょう。

  • 犯罪事実確認の手続き担当
  • 情報管理の責任者(犯歴情報を扱える人を限定)
  • 研修の企画・実施担当

ステップ2:最低限の規程・書類整備(2026年春頃~)

必須書類①:行動規範

小規模事業者向けの簡易版行動規範のポイント

【記載すべき内容の一例】
✓ 基本方針(こどもの安全を最優先する等)
✓ 禁止事項(具体的に列挙)
  - こどもと1対1で密室にならない
  - 私物スマホでこどもの写真を撮らない
  - こどもとSNSで私的なやり取りをしない
  - 休日にこどもと二人きりで会わない
✓ 相談窓口の設置(経営者が窓口でもOK)
✓ 研修の実施(年1回以上)

小規模事業者のコツ:スタッフ全員が理解できる平易な言葉で作成しましょう。

必須書類②:情報管理規程

犯歴情報の取扱いルールを定めます。
(※国のガイドライン等が発表され次第、以下の内容は変更になる可能性があります。)

【記載内容の例】
✓ 取扱責任者:○○(氏名)
✓ 保管方法:専用のPCでのみ管理(パスワード設定)
✓ アクセス権限:取扱責任者のみ
✓ 保管期間:確認から5年間
✓ 漏えい時の対応:こども家庭庁へ即時報告

小規模事業者の注意点:犯歴情報は紙で保管したり、USBメモリや個人PCへの保存は極力控えましょう。

必須書類③:相談対応マニュアル(A4で1枚程度)

こどもや保護者からの相談を受けた時の対応手順を定めます。

【記載すべき内容の一例】
✓ 相談窓口:○○(経営者または指定者)
✓ 相談方法:電話、メール、面談
✓ 対応の流れ
  1. まずは話を聞く(否定しない)
  2. 事実確認(こどもの心情に配慮)
  3. 必要に応じて専門機関に相談
  4. こどもの安全確保措置
✓ 記録の保管方法

小規模事業者のポイント:相談があった場合、一人で抱え込まず、児童相談所や警察など専門機関と連携することが大切です。マニュアルに連絡先を記載しておきましょう。

あると望ましい書類:就業規則の見直し

従業員10名未満でも就業規則がある場合は、以下を追加しましょう。

  • 解雇事由:「重要な経歴の詐称があったとき」
  • 懲戒事由:「性暴力またはそのおそれのある行為をしたとき」

就業規則がない場合:雇用契約書に記載するか、別途「服務規律」として文書化します。

ステップ3:採用フローの見直し(2026年春~施行まで)

※こども性暴力防止法に関連する、国のガイドラインおよび通知の最終版が公表され次第、対応すべき内容は変更になる可能性があります。(記載内容は2025年11月25日時点のもの)

変更点①:募集要項への記載

求人広告や募集要項に、以下を明記する必要が出てくる可能性があります。

【記載例】
「当教室は、こども性暴力防止法に基づく認定事業者です。
採用にあたり、性犯罪歴の確認を実施いたします。」

変更点②:面接時の説明と誓約書

面接時に、以下を口頭で説明し、誓約書に署名してもらいます。

【誓約書の内容例】
✓ 特定性犯罪の前科がないことを誓約します
✓ 虚偽の申告をした場合、内定取消または解雇されることに同意します
✓ 犯罪事実確認の実施に同意します

小規模事業者の注意点:この手続きを省略すると、後から問題が発覚した際に解雇が無効になるリスクがあります。

変更点③:内定通知書への記載

内定通知書に、以下を明記します。

【記載例】
「本内定は、以下の条件を満たすことを前提とします。
・犯罪事実確認において、特定性犯罪の前科がないこと
・重要な経歴に詐称がないこと

上記に反する事実が判明した場合、内定を取り消すことがあります。」

変更点④:性犯罪事実確認の実施

実施タイミング

  • 原則:内定後~勤務開始まで
  • 特例:やむを得ない場合は勤務開始から3か月以内(急な欠員等)
    合併・新設、国による確認の遅れ等の場合は、従事開始から6か月以内

所要期間

  • 日本国籍:2週間~1か月
  • 外国籍:1か月~2か月程度

確認期間中の注意点:確認が完了するまでは、こどもと1対1にしない等の措置が必要です。例えば、先輩講師と一緒に指導させる、保護者の見学を促すなど。

変更点⑤:性犯罪歴が判明した場合の対応

犯罪事実確認で性犯罪歴が判明した場合、または入職後に性暴力が疑われる事実が判明した場合、こどもに接する業務に就かせない措置を取ります。

現職スタッフへの対応:施行後1年以内に確認が必要

認定取得時のスケジュール

認定を受けた場合、認定から1年以内に現職スタッフ全員の性犯罪事実確認を実施する必要があります。

確認の進め方

  1. スタッフへの説明会を開催
    • 法律の趣旨と目的
    • 確認の必要性
    • プライバシーの保護
    • 確認スケジュール
  2. 順次確認を実施
  3. 結果の管理
    • 5年後の再確認時期をカレンダーに記録

研修の実施:小規模事業者でもできる簡易版

研修の義務

年1回以上、全従事者向けの研修を実施する必要があります。

小規模事業者向け研修プラン

実施方法

  • オンライン研修(こども家庭庁が研修教材を公表する予定です。)
  • 経営者による説明+資料配布

研修内容の一例

  1. こども性暴力防止法の趣旨
  2. 事業所の行動規範の説明
  3. 禁止行為の具体例
    • NG事例の動画視聴など
  4. 相談窓口の案内
  5. 質疑応答

小規模事業者のコツ

  • 全員が同じ日に集まるのが難しい場合、数回に分けて実施
  • こども家庭庁の教材(2025年度内公表予定)を活用すれば、準備の負担が軽減されます。
  • 研修実施の記録(日時、参加者、内容)を保管します。

研修の記録方法

【記録例】
実施日:2027年4月15日
参加者:○○、△△、□□(計5名)
内容:こども家庭庁の研修動画視聴
    事業所の行動規範説明
備考:全員が理解した旨を確認

認定申請の実際:手続きと費用

申請の流れ

具体的な手続きに関しては、今後マニュアルが公表される予定です。
申請はオンラインにて、申請手数料は3万円程度を予定しているとのことです。

よくある質問(小規模事業者向け)

Q:夏期講習だけの短期アルバイトやボランティアも対象?

A:こどもと継続的に接する業務なら雇用形態に関わらず対象です。

ただし、確認には2週間~1か月かかるため、採用計画を早めに立てる必要があります。

Q:先生以外の事務スタッフなども対象?

A:こどもに継続的に接する可能性がある職種は、事務スタッフやバスの運転手さんなども現場判断で対象となる予定です。

Q:オンライン授業のみの講師も対象?

A:法律の要件に「対面で接する」とあるため、現時点での解釈では完全オンラインの講師は対象外です。

Q:個人事業主の私一人で教室を運営している。対象になる?

A:「こどもに教える者が3人以上」という要件があるため、対象外です。

Q:認定を取得しないとどうなる?

A:法的な罰則等ははありません

まとめ:小規模事業者が押さえるべきポイント

民間事業者にとって、こども性暴力防止法に基づく認定を受けるかどうかは任意です。
事業の内容や規模、競合他社などの状況により認定の必要性は濃淡もさまざまなことと思います。しかし、こどもたちを守る対策をしっかりと行うことは、被害の未然防止につながる意義深いことでもあります。
取り組めるところから少しづつ、対策を行うことをおすすめします。


参考資料

※本記事の内容は2025年11月時点の情報に基づいています。今後、ガイドラインやマニュアルの公表により、詳細が変更される可能性があります。最新情報はこども家庭庁のウェブサイトでご確認ください。

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